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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)855号 判決 1954年2月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士鈴木義男、同河野太郎の上告理由は、別紙記載のとおりである。

上告理由第一点の(三)について。

論旨は、湯浅日出子は、本件解散請求署名簿の署名当時選挙権を有しなかつたことが明かであるから、同人の署名は無効であると主張し、この点に関する原判決の判示を非難するものである。

しかしながら、地方自治法七六条四項の準用する同法七四条四項は、「第一項の選挙権を有する者とは、選挙人名簿確定の日においてこれに記載された者とし、……」と規定し、同法七六条四項の準用する同法七四条の二第一項も「……これに署名し印をおした者が選挙人名簿に記載された者であることの証明を求めなければならない。……」と規定しており、選挙人名簿に記載されている以上その後選挙権を失つた者でも直接請求の署名簿に署名をすることができるものと解するを相当とする。論旨は選挙当時選挙権を有しない者は、選挙人名簿に記載されている者でも投票できないことを理由として、署名簿に署名をするにはその当時も選挙権を有することを必要とすると主張するのであるが、署名は、選挙または解散賛否投票そのものとは異り解散賛否投票の原因となるわけであつて終局的に法律上の効果を生ずるものではなく、かつ、市町村選挙管理委員会の署名簿の署名の審査は迅速に行われることを要するから、右のような便宜的な規定も必ずしも不合理ではなく、右の規定を原判決のように解しても違法とすべき理由はない。論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は、原判決は、上告人の主張を誤解して判断を下した違法があるというのである。

しかしながら、かりに所論の九名の署名に関し、原審が上告人の主張を誤解したものとしても、上告人の主張によつても、右九名は署名する意味が不明のまま要求されて署名捺印したというに過ぎない。直接請求の署名簿の署名は、右のような事由によつて、直ちに、その効力を失うものではなく右のような理由によつて署名の効力を失わせるためには、地方自治法施行令一〇〇条、九五条で規定する時期までに、同条に規定する方法によつて署名及び印を取り消すことを要するのであつて、右取消の事実の認められない本件において上告人主張のような事由によつて右の署名を無効と解することはできないとした原判決の判断は結局正当であつて、論旨は理由がない。

同第三点について。

論旨は、解散請求の理由書の内容がわからないでした署名は無効であると主張するのであるが、署名の効力を前段説明のとおり解する以上論旨の理由がないことは説明を要しない。

以上説明のほか論旨は、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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